移り気なブログ

テーマなどない自由気ままな雑記帳です。

ラッシュライフ(伊坂幸太郎)の感想

ブクログに書いた感想を転載。



様々なところで起こる出来事が、ジグソーパズルのように最後は1点に収れんされていく。

ありえないことばかりで読むのに疲れてしまったが、気に入った表現が数か所あったので書き出してみる。

・蟻や蜂は自分たちの巣や集団の維持のためには戦うが、自分自身の恨みのために相手を倒すことはない。

・「俺はさっき泥棒のプロフェッショナルだと言ったよな」
「確かに」
「でもな、人生については誰もがアマチュアなんだよ。そうだろ?」

・「行き詰っていると本人が思い込んでいただけだよ。人ってのはみんなそうだな。例えば砂漠に白線を引いてその上を一歩も踏み外さないように怯えて歩いているだけなんだ。周りは砂漠だぜ、縦横無尽に歩けるのに,ラインを踏み外したら死んでしまうと思い込んでいる」

あと、引用するには長すぎるので割愛するが、「プラナリア」についてのくだり。




ブクログでは割愛したが、プラナリアについてのくだりをここに引用しておく。

・「プラナリアというのは何だい?」
「二センチくらいの小さい動物だよ。脳もないような原始的な動物だ」
「それの実験か」
プラナリアは水がないと生きられないらしい。で、そいつを容器に入れる。入っていた水を抜く。水は一か所にしかないようにするんだ。そこにライトを当てる。そうすると水を求めて移動する。当然だな。で、それを繰り返すとだ、プラナリアはライトが当たる場所に移動するようになるんだ。水がなくても移動する」
「学習するというわけか」
「そうだ。ライトが当たる場所に水があることを憶えるんだな。で、その実験をさらに何度も繰り返した。どうなったと思う?」
「幸せに暮らしたのかい?」佐々岡は冗談めかして言った。
 黒沢は首を横に振った。「ある時から、今度はまったく動かなくなった。ライトを幾ら当てても、移動しなくなった。そうして水がないまま死んだ」
「どうして?」
「さあな。ただ、これはプラナリアが『飽きた』からじゃないかと言われている。同じ繰り返しに飽きたんだ。その証拠に容器の内側の材質を変えたり、状況を変えるとまた学習を続けるらしい。とにかくだ、この原始的な動物ですら、同じことの繰り返しよりも自殺することを選ぶ」
「本当なのか、それは」
「あってもおかしくないだろう?人間なんてなおさらだよ。何十年も同じ生活を繰り返し、同じ仕事を続けているんだ。原始生物でも嫌になってしまう、その延々と続く退屈を、人はどうやって納得しているか知っているか?『人生ってのはそういうものだ』とな、みんなそう自分に言い聞かせているんだよ。それで奇妙にも納得しているんだ。変なものだ。人生の何が分かってそんなことを断定できるのか俺には不可解だよ」